税務調査の過程でミスを指摘される事がありますが、そのミスの原因は会社が原因のものもありますが、中には税理士が原因のものも含まれます。特に税理士が税制改正に気づかずに、前の法律のまま処理をしてしまったという事があります。

実際、私どもの会計事務所には税務調査の際の税理士の対応やそのときに発覚したミスが原因で移ってきた顧問先も少なくありません。

その際に、そのミスが原因で追加で納付すべき税額が増額したり、延滞税や加算税が課されると税理士に損害賠償などの責任追及をしたくなるのが通常ですが、その際に気を付けなければいけないのが、そのミスの原因が全て税理士の責任かという点です。

経営者の中には、税理士は毎月監査をしているのだから会社側にミスがあった場合、「税理士が気が付かなかったのが悪い」と言われる人がいますが、経営者側にも経理をチェックする責任があります。

税理士の損害賠償責任の範囲はどこまでか?

前出のとおり、税理士が税制改正に気が付かなくて税額が増えた場合には損害賠償を請求する余地があるかと思いますが、それ以外の場合にはどうでしょうか。

例えば、役員報酬が過大であった場合や経費として認められると思った支出したものが認められなかった場合などです。

役員報酬の金額は本来税理士が決めるものではなく株主総会や取締役会の決議を経て決まるものなのであり、その支給金額が適正かどうかは会社側の判断に委ねられます。

また経費についても、個人法人問わず事業に必要な経費のみ支出をするのが原則なので、税務調査の際に事業に必要なものと認められなかったとしても、その全ての責任を税理士が負担するというのは難しいでしょう。

ですので、仮に上記の点について税務調査で指摘をされて税理士に増加分の税金の負担、延滞税、加算税などの損害賠償を請求するのは難しいと思われます。

経営者の監督責任についても問われる可能性がある

例えば、税理士に記帳代行を依頼していて、その入力そのものにミスがあった場合には税理士に責任がありますが、記帳代行をする際に必要な会社が作成する原始資料そのものにミスがあった場合、原始資料が合っているかのチェックを税理士がするのは難しく、むしろ会社側は本来チェックすべく点かと思われます。

ただし、内容によっては税理士であれば当然気づくべきミスもありますので、そのような場合はある程度税理士に対しても損害の一部を負担してもらえる可能性もあります。

税理士職業賠償責任保険とは?

税理士が資格に基づいて行った業務を原因として損害賠償請求を受けた場合には、その損害について保険金が支払われることになっています。

なお税理士職業賠償責任保険は、個人の税理士は約50%、税理士法人は約80%加入しています。

追徴税額が発生したから税理士の責任という訳ではない

税務調査の結果、追徴税額が発生した場合に稀にあるのが「追徴税額は税理士の責任」という指摘です。

税理士の計算ミスの場合は当然税理士側に責任がありますが、そうでない場合には追徴税額を含めた税額が本来納めるべき税額であり、追徴税額がペナルティの性質を持たない場合も多々あります。

この点を含めて、税理士にミスの原因があるのかどうかを冷静に判断することが重要です。